聖 書:マルコによる福音書 第7章14~23節
7:14 それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。
7:15 すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。7:16 聞く耳のある者は聞くがよい」。
7:17 イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。
7:18 すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。
7:19 それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。
7:20 さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。
7:21 すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、
7:22 姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。
7:23 これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。

  今年の夏は連続真夏日が続いている。暑さの目安となる真夏日とは30℃を超えた日を、35℃を超えた日は猛暑日というのだそうだ。内陸部の岐阜県では40℃を観測したそうで、人間の体温より高くなるとさぞかし気持ちが悪いだろう。暑い日が続くと汗をかき洗濯をこまめにする。服などは外側の汚れやしみは洗濯やドライクリーニングできれいになる。では心の中側はいったいどうやったらきれいにされるだろうか。

1. 神の戒めと人間の言い伝え
イエス様の時代にパリサイ派と呼ばれた人々がいた。彼らと律法学者はユダヤ教に伝わる単なる昔の人間の言い伝えを、神の戒めであるかのように拡大解釈して、他の人をさばき自分たちだけが忠実に律法を守り行っていると見せかけて、神の前に常に正しいとおごり高ぶっていた。パリサイ人はイエス様の弟子たちが、自分たちが受けついだ言い伝えを守らないことが気に入らなかった。そこで彼らはイエス様に「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。と不平を言った(7)。イエス様は彼らの偽善を鋭く見抜かれて「あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。さらに「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。」(8,9)と逆に指摘する。彼らは人間の言伝えを守っていることで表面的には義人を装い、汚れのない聖人として振舞っていた(マタイ23:27~28)。
日本の社会ではクリスチャンは少数派だ。勢いわたしたち昔からの言い伝えだから、家の決まりごとだから、日本の風習だからなどの声に流されて、それが信仰とは相容れない行いと知りながら、神様のまなざしではなくまわりの人の目を気にして、思わず信仰を隠してしまうことはないだろうか。

2.内なるきよさと外側の汚れ
イエス様はパリサイ人だけでなく、群集を呼び寄せて「すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。」(15)といわれた。パリサイ人は外界の世にある汚れから、自分たちを形式的に「分離する」(ヘブル語でパリサイ人に由来する。)ことで、汚れは断つことができると思い込んでいた。イエス様はその言い伝えは完全に間違えていると語られる。さらに汚れというものは人の内側にひそみ、生まれながら人の心にたまっている「罪」が、噴出して人を汚すという確信を衝いた真理を示される。ところが弟子たちでさえ、「どんな食物でもきよい」とされる真理に疎かった。その訳は旧約聖書には食物に関する規定がレビ記11章に詳しく書かれてあり、ユダヤ人にとってきよい食物と汚れた食物は厳格に分かれていた。復活後のイエス様にお会いしたペテロでさえも、依然としてユダヤ人としての規律と古い習慣に惑わされていた(使徒11:1~9)。イエス様はこのとき旧約聖書の新しい解釈をなされた。

3.心の中まできよめられる神
イエス様は弟子たちに向かって、人から出てきて人を汚す悪いもののリストを教えられた。それが21~22節までの12の個である。すなわち不品行、盗み、殺人、姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。これらの悪のリストは、人の目にあからさまにわかる悪 (不品行、盗み、殺人、姦淫、貪欲、邪悪)もあれば、一見してその人が悪い心を抱いているとわかりづらい内面の心理的な悪(欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴)もある。いずれにしろ神様にはすべてがお見通しである。しかしイエス様はそんなわたしたちの汚い悪に傾きやすい心をすべてご存じである。自分の汚い心に気づかされた時には、いつでもイエス様のところへいき、ありのままに告白しよう。神様はあなたを決してさばかず、ありのままでゆるし、同じ悪をおかさないようにきよめてくれる(Ⅰヨハネ1:9)。