聖 書 ヨハネ1：29～37

29：その翌日、ヨハネはイエスが自分の方にこられるのを見て言った、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。
30：『わたしのあとに来るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この人のことである。
31：わたしはこのかたを知らなかった。しかし、このかたがイスラエルに現れてくださるそのことのために、わたしはきて、水でバプテスマを授けているのである」。
32：ヨハネはまたあかしをして言った、「わたしは、御霊がはとのように天から下って、彼の上にとどまるのを見た。
33：わたしはこの人を知らなかった。しかし、水でバプテスマを授けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに言われた、『ある人の上に、御霊が下ってとどまるのを見たら、その人こそは、御霊によってバプテスマを授けるかたである』。
34：わたしはそれを見たので、このかたこそ神の子であると、あかしをしたのである」。
35：その翌日、ヨハネはまたふたりの弟子たちと一緒に立っていたが、
36：イエスが歩いておられるのに目をとめて言った、「見よ、神の小羊」。
37：そのふたりの弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。

金 言
　「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。」（ヨハネ１：２９）
バﾌﾟテスマのヨハネの証
　「露払い」ということばがある。先に立って道を開いて貴人などを導くこと、その役目を担う人を意味する。バプテスマのヨハネはイエス・キリストの露払いのように先駆者として「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』(マルコ1：2-3)と人々にメシヤの到来を告げ悔い改めを直言した。彼はイエス様について数々の貴重な証言をした。｢初めに言があった｣が示すように、わたしのあとに来るかたはわたしよりも先におられたと主イエスの先在性を公言した。イエス様がバプテスマを受けると御霊が天からはとのように下った目撃者となり天からのわたしの愛する子という声が聞こえたので、御父と御子イエスは一体であり永遠の関係にあると知りこの方は聖霊によるバプテスマを授けると言明した。なによりイエス様を指し示して｢世の罪を取り除く神の小羊｣とこの方こそが救い主であると決定的な証言をした。
聖書にみる『神の小羊』
　旧約聖書において小羊は罪のいけにえとして何箇所か登場する。創世記22章のアブラハムは息子イサクを燔祭としてささげよと神様から命じられ苦渋の中で従うが、間一髪で神みずからが小羊を備えられた。出エジプト記12章ではイスラエルの民は過越祭に小羊をほふりその血を家のかもいに塗ることで神様のさばきを逃れた。イザヤ書53章では苦難の僕が｢ほふり場にひかれていく小羊｣として描かれる。これらは新約聖書におけるイエス様の十字架の予表とされる。きよい神様に罪を持った人間が近づくには罪のゆるしが必要だ。｢血を流すことなしには、罪のゆるしはあり得ない。｣(ヘブル9：22)とあるように、旧約時代、神様が備えた世の罪を取り除くいけにえは聖別された小羊だった。神殿に連れてこられた小羊に人々が手を置いて罪の告白をすることで、人の罪は小羊に転嫁された。祭司はその小羊をほふって血を祭壇にまいた。こうして罪にない小羊による身代わりの死によって人間の罪の赦しの祭儀をした。しかし、そのような祭儀では人の心を到底きよめることはできず、結果的には良心の呵責に責められるだけだった。ヨハネは十字架のイエス様こそ神の小羊キリストであると言っている。イエス様は十字架の死によって世の罪を一身に背負われて、その罪の力を根底から取り除かれ良心をきよめる。(ヘブル9：11-14)　使徒ヨハネが書いたヨハネの黙示録5：6以下にも小羊が出てくる。｢あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、｣(黙示録5：9)人間は神の小羊であるキリストの血によって初めて罪の完全な贖いを受けて神様の義と永遠の赦しと救いを授けられた。 「キリストは神に立てられて、わたしたちの知恵となり、義と聖とあがないとになられたのである。」（コリント1：30）
目を開いて『神の小羊』を見よ
　人間は神様が見えないから神はいないと否定して神など信じられないと言う。そして神様がいない暗闇をさすらうように暮らしている。バプテスマのヨハネは初めに｢見よ｣と言った。これを人間の信仰に当てはめるとわかりやすい。ヨハネは彼の手紙で「神は光であって、神には少しの暗いところもない。」と言っている。人が目をつぶっていたら、太陽が輝いていても光の恩恵は受けられない。しかし、信仰の目を開くならば、神様の光はその人の人生に差し込むのである。｢しかし、神が光の中にいますように、わたしたちも光の中を歩くならば、わたしたちは互に交わりをもち、そして、御子イエスの血が、すべての罪からわたしたちをきよめるのである。｣(Ⅰヨハネ１：７)