聖 書 マタイによる福音書9章35~38節
9:35 イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
9:36 また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。
9:37 そして弟子たちに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。
9:38 だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。

金言 イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。(マタイ5:35)

郵便制度が整うまでは、飛脚がありました。某宅急便会社のマークにそのなごりが見られますね。飛脚は依頼主から荷物を預かった人がそれを直に届けてくれるシステムでした。現在でも書留や電報は家のポストに投函しないで、受取人に会って玄関口で手渡します。福音は神様からのラブレターとよく言われます。それを待っている人に届ける配達人の役目をするのがクリスチャンであり教会の働きです。

1.求めている人を探す

今読まれた聖書箇所はマタイ9章の終わりの数節です。9章を初めから読んでみるとここでイエスは次から次へと奇跡を行っていることがわかります。2節で中風の者をいやし、18節で会堂司が死んだ娘のよみがえりを願いに来ます。その途中で長血を患った女をなおし(20~22)、23節で先ほどの司の家に行き死んだ娘を生き返らせます。27節からは登場する二人の盲人の目を開きます。

興味深いことはこの福音書を書いたマタイは自分の救いと献身をこの奇跡の連続のなかに入れていることです(9~13)。マタイの職業は罪深いとされた取税人でした。ですからマタイは取税人の自分がイエスの「わたしに従ってきなさい。」という一言で救われたのは神の奇跡を体験するようでした。マタイにとって自分が救われたことは死んでいた娘が生き返り、不治の病が治り、盲人の目が見えるようになる奇跡と同じくらいすばらしいことだったのです。わたしたちの救いはそれぞれが神の奇跡であり、一つひとつに神のドラマがあります。健康は人にとって大切です。しかし人は健康や富だけでは幸せを得られないのです。罪を持ったままの状態ではその人に本当の幸福は訪れません。マタイはその典型的な見本でした。

だからイエスは少しも休むことなく働きの手を止めることなく「すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え」ました(35)。なぜならイエスは自分の公生涯が三年間という期限付きであることを知っていました。迫りくる十字架を前にして一刻の猶予も惜しんで、できる限り多くの場所を訪問しようと決められました。イエスは心身共に疲れていても不眠不休で働かれました。実際そうせずにはおられないほどに、人々の暮らしは悲惨で人々は救いを求めていました。わたしたちの近くにも本当の幸せを求めている人が必ずいるはずです。そういう人が見つかるように祈りましょう。イエスのように出会えるまで探してください。

2.あわれみ深さに似る

イエスは訪問するどの町や村に行っても、そこに住む人々を深くあわれまれました。「あわれみ」は聖書の神のご本質で性質です(哀歌3:22~23)。「わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない」(9:13)と言われました。イエスはどこに行かれてもイエスに押し寄せる群衆をあわれみの瞳で見つめ続けます。

イエスは救いと助けを求めてくる人を、牧者がいない羊にたとえます(36)。羊は羊飼いの世話がなければひとりでは生きていけません。そもそも救いは主のあわれみという土台の上に立つものです。救われたクリスチャンは主があわれみ深いように、イエスと似た者になることを神様はあなたに求められます。そうすることで主のあわれみが地に満ちるためです。「兄弟が困っているのを見て、あわれみの心を閉じる者には、どうして神の愛が、彼のうちにあろうか。」(Ⅰヨハ3:17)主があわれたにも関わらず自分は友に非情な仕打ちをした人がいます(マタ18:23~33)。あわれみを行わなかった者には相応のさばきを受けます(ヤコ2:13)。イエスのようなあわれみ深い者になることで、人々はあなたを通して神の恵みを受けるのです。

3.収穫は多いが、働き人が少ない

現在日本では救われる人が決して多くはありません。「収穫が多い」と言われたのは聖書の時代のことでしょうか。そうではありません。この国には救いを必要としている人が潜在的に大勢います。統計によると日本の自殺者数は平成25年は2万7,283人でした。自殺の原因は健康問題と経済・生活問題で7割を占めますが、これは人が生きるとき普遍的な問題で、世界には日本より過酷な環境で生きる人々が大勢います。それでも日本の自殺率は世界でトップレベルです。日本人が自殺する本当の原因は他にあるように思われます。人は神様に造られたこの上もなく尊い存在です。あなたが今どんなみじめな姿でも、神様はそんなあなたの罪を赦すために十字架におかかりになりました。あなたは最高の愛で永遠に愛されていますと知ることです。そのことがいっそ死んでしまいたいと悩む人を絶望から救い、今は見えなくても確かに存在する希望があると信じて生きていく力となります。