『メサイア』は、音楽家のヘンデルが、イエス・キリストの生誕、受難、復活を表現した壮大な楽曲で、特にクリスマスの時期に、イエス・キリストの生誕をお祝いして、世界中で演奏されています。
■『メサイア』(メシア)とは?
『メサイア』(メシア)とは、その言葉の由来から「救い主」を意味し、西暦の起点となった時代にこの世界に来られたイエス・キリストを指しています。そして、この方が来られることは、世界の始まりから終わりまでを描いた『聖書』の中で、はるか昔から予告(「預言」)されていて、『メサイア』第一部では、『聖書』が予告していたとおりにイエス・キリストが来られたことが歌われます。では、このことを通して、『聖書』は、私たちに何を語りかけているのでしょう?
■『旧約聖書』に書かれた「預言」
『聖書』によれば、この世界が神によって創られた後、人間が「罪」を負ったことによって、私たち人間は今、死に至る病のような状態に陥っていると説明しています。そこで神は、私たちを罪という病から救い出し、新しい神の命に与らせるために、一人の人から民族を起こし、その子孫から「救い主」を誕生させると予告をされました。そのことが書かれた書物が、『聖書』の前半に収められた『旧約聖書』です。
『メサイア』第一部では主に、このような、神が予告された多くの言葉を紹介し、それらがイエス・キリストの登場によって、そのとおりになったことが歌われます。
■救い主誕生の「預言」とその成就
第一部の前半では主に、「救い主」がどのような方で、どのようにお生まれになるかなどの予告の言葉が歌われます。すなわち「救い主」は、8番「おとめみごもりて」で歌われるとおり、「インマヌエル(神が私たちと共におられる)」と呼ばれ、12番「神のひとりごを」で「力ある神、永遠(とこしえ)の父、平和の君」と歌われる、驚くべき方であることが明かされていきます。
そして後半では、『新約聖書』の記録も交えて、「救い主」の誕生とその生涯が歌われます。とりわけ、「救い主」が生まれたときは、15番「ひとびとおそるな」や、16番「たちまちみ使いたち現われ」などで歌われるとおり、おびただしい天使が「天(あめ)には栄光(さかえ) 神にあれ」と歌う中、この赤子こそ「主キリスト」であると、当時の人々にとっては信じられないことが天使によって宣言されました。
■救い主イエス・キリスト
なぜなら、この時に「主キリスト」と宣言された「主」とは、『旧約聖書』で示されていた神の名前に他ならず、更に「キリスト」とは、ギリシャ語で「救い主」を意味していたからです。従って、後に「主イエス・キリスト」と呼ばれることになるこの赤子こそ、「救い主としてこの世界に来られた、旧約聖書に書かれた主なる神」であったのです。
こうした驚くべき出来事をはじめ、『聖書』には、「救い主」に関する「メシア預言」と呼ばれる予告が300以上もちりばめられています。そして、それらがすべてそのとおりに実現していくことを通して、「主イエス・キリスト」が紛れもなく「神」であり「救い主」であることが証明されていきます。ゆえに、『聖書』の言葉は信頼に値し、神は今も生きておられ、『聖書』に書かれた約束を必ず守られる方である、と信じることが出来るのです。