聖 書:ダニエル書2 :25~49 ローマ11:33~35

25:アリオクは急いでダニエルを王の前に連れて行き、王にこう言った、「ユダから捕え移した者の中に、その解き明かしを王にお知らせすることのできる、ひとりの人を見つけました」。
26:王は答えて、ベルテシャザルという名のダニエルに言った、「あなたはわたしが見た夢と、その解き明かしとをわたしに知らせることができるのか」。
27:ダニエルは王に答えて言った、「王が求められる秘密は、知者、法術士、博士、占い師など、これを王に示すことはできません。
28:しかし秘密をあらわすひとりの神が天におられます。彼は後の日に起るべき事を、ネブカデネザル王に知らされたのです。あなたの夢と、あなたが床にあって見た脳中の幻はこれです。
29:王よ、あなたが床におられたとき、この後どんな事があろうかと、思いまわされたが、秘密をあらわされるかたが、将来どんな事が起るかを、あなたに知らされたのです。
30:この秘密をわたしにあらわされたのは、すべての生ける者にまさって、わたしに知恵があるためではなく、ただその解き明かしを、王にお知らせすることによって、あなたが心に思われたことを、お知りになるためです。
31:王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。その像は大きく、非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。
32:その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹と、ももとは青銅、
33:すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。
34:あなたが見ておられたとき、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。
35:こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。
36:これがその夢です。今わたしたちはその解き明かしを、王の前に申しあげましょう。
37:王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、
38:また人の子ら、野の獣、空の鳥はどこにいるものでも、皆これをあなたの手に与えて、ことごとく治めさせられました。あなたはあの金の頭です。
39:あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります。また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります。
40:第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。
41:あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします。しかしあなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、その国には鉄の強さがあるでしょう。
42:その足の指の一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。
43:あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に混ざるでしょう。しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合することはありません。
44:それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです。
45:一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と、青銅と、粘土と、銀と、金とを打ち砕いたのを、あなたが見られたのはこの事です。大いなる神がこの後に起るべきことを、王に知らされたのです。その夢はまことであって、この解き明かしは確かです」。
46:そこでネブカデネザル王はひれ伏して、ダニエルを拝し、供え物と薫香とを、彼にささげることを命じた。
47:そして王はダニエルに答えて言った、「あなたがこの秘密をあらわすことができたのを見ると、まことに、あなたがたの神は神々の神、王たちの主であって、秘密をあらわされるかただ」。
48:こうして王はダニエルに高い位を授け、多くの大いなる贈り物を与えて、彼をバビロン全州の総督とし、またバビロンの知者たちを統轄する者の長とした。
49:王はまたダニエルの願いによって、シャデラクとメシャクとアベデネゴを任命して、バビロン州の事務をつかさどらせた。ただしダニエルは王の宮にとどまっていた。

33:ああ深いかな、神の知恵と知識との富は。そのさばきは窮めがたく、その道は測りがたい。
34:「だれが、主の心を知っていたか。だれが、主の計画にあずかったか。
35:また、だれが、まず主に与えて、/その報いを受けるであろうか」。

金 言 
「ああ深いかな、神の知恵と知識との富は。そのさばきは窮めがたく、その道は測りがたい」。 (ローマ11:33)
 
 今週と次週は預言者ダニエルから、異教社会に生きる者の信仰を学びます。彼は、イスラエル民族が罪を犯し、神のさばきを受けて、バビロン捕囚になった時代に活躍しました (1:1-3)。ダニエルは、世界の覇権を握る王たちに仕える者となりました。自分たちは、戦争に負けて捕虜となった少数民族です。自分たちの信仰の支えであった神殿は破壊され国を失い、今は、異教の神々に囲まれている社会で生きるしかありません。過去を悔い、今を嘆き、将来に希望が見いだすことができない時です。バビロン帝国の圧倒的な力に囲まれて押しつぶされてしまうなかで、ダニエルは、神を信じたのです。そして、神はダニエルを助け守り通したのです。
1.圧倒的なこの世の力
ネブカデネザル王は不気味な夢を見て、恐れました。この世の最高権力を持ち、なんでも自分の自由にすることができる王であるならば、夢など気にすることもないはずです。しかし、人は、「失うことの恐怖」を持っているのです。心が動揺で、夢も忘れ、なお不安に襲われました。国にいる夢を解き明かすことのできる者を集め、見た夢そのものを示し、その意味を解き明かすことを命じます。人にできないことを要求する王の横暴は止まりません。
この世しか見えない者は、どんなに権力やこの世の知識があり自分を誇っても、自分の思う通りにならないと、このような愚かなことをしてしまうのです。「自分という枠」からは一歩も出られずに、人を恐れ、自分を失い、自滅していくネブカデネザル王の醜い姿があります。わたしたちもこの世に巻き込まれてしまっています。
2.ダニエルの信仰
  この異教社会の王に仕えるダニエルが、恐れることなく、王に進言します。ダニエルの信仰と人格から学んでみましょう。?「ダニエルは王の食物と、王の飲む酒とをもって、自分を汚すまいと、心に思い定めたので、自分を汚させることのないように、宦官の長に求めた」(1:8)。世と罪に流されない生き方です。?「この四人の者には、神は知識を与え、すべての文学と知恵にさとい者とされた。ダニエルはまたすべての幻と夢とを理解した」(1:17)。この世と違う、神からの知恵です。? 「そして王の侍衛の長アリオクが、バビロンの知者らを殺そうと出てきたので、ダニエルは思慮と知恵とをもってこれに応答した」。自分たちも殺されようとした時、冷靜沈着な行動です。ネブカデネザル王はダニエルに猶予を与えられました。神を信じる者の平安がありました。
3.測りがたい神の計画
 ダニエルは不思議な夢を示し、解き明かします。この夢は、ネブカデネザル王以後の「世界の推移」を示したものです。それは神のご計画です。この世しか見えない者は、けっして知ることはできません。この世の創造者、支配者である真の神だけが持つ「測りがたい神の計画」です。
この夢の結末は、「それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです」(44)。神ご自身が、永遠の神の国を完成するのが、神のご計画の完成です。それは、主イエス・キリストの再臨によって成就するのです。
異教社会の少数民族であるダニエルが、ネブカダネザル王の狼狽、横暴に振り回されず、王に夢を解き明かすことができたのは、「測りがたい神の計画」をすでに、ダニエル自身が経験していたからです。「測りがたい神の計画」は、壮大な人類史で成就するだけではなく、神を信頼する一個人にも及んでいるのです。