聖 書:ルカ2章8節~14節

(8) さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。(9)すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。(10) 御使は言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。(11) きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。(12) あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。(13) するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、(14) 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。

 聖書にはクリスマス場面やクリスマスを囲む人々について多くの記事が掲載されています。マリヤへの受胎告知、東方の博士、ヨセフへの告知、シメオンやアンナと幼児イエスとの出会い、マリヤとエリサベツの面談など。羊飼いへの顕現と告知もその一つです。
Ⅰ.羊飼いへの顕現
 ベツレヘムにおける救主の降誕の第一報は、王でもなく、祭司でもなく、ラビ(教師)でもなく、最も下層階級の者として人々から蔑まれた羊飼いたちに届けられました。これは人間の常識を遥かに越えた驚くべきことです。ですから私たちまでこのニュースが届けられたのではないでしょうか。聖書は「わたしは高く、聖なる所に住み、また心砕けて、へりくだる者と共に住み、へりくだる者の霊をいかし、砕けたる者の心をいかす」(イザヤ57:15)と教えています。
 それは彼らが「野宿しながら羊の群れの番をしていた」(8)という普段の生活の中で行われました。神は私たちの生活とかけ離れた所におられるのではなく、特別改まった時や場所におられるのではなく、何の変哲もない日常生活の中におられて、私たちにご自身を現されるのです。
Ⅱ.羊飼いへの告知
 主の栄光を伴った顕現でしたので羊飼いたちは非常に恐れました。御使は「恐れるな」と前置きして三つのことを告知しました。
1.きょう→仏教思想では「今」という概念はありません。未来はすぐに「今」となり、「今」はすぐに過去となるのです。「今」は単なる通過点にすぎません。しかしキリスト教においては「今」は非常に重要なものです。聖書は「今は恵みの時、救いの日である」(Ⅱコリント6:2)と教えています。「今」を大切にすることによって、今は良い過去となり、未来は良い今となるのです。 
2.救い主(キリスト)→生まれ出るのは天才、政治家、権力者、科学者、芸術家ではなく、最も人々が必要とする救主(メシヤ)でした。
3.飼い葉おけ→これは貧しさ、謙遜、糧の象徴です。これらのものは人が真に幸福に生きる大切な要素なのです。
Ⅲ.天使たちの大合唱
羊飼いへの告知が無事に終わったのを見届けた後、天の軍勢は御使と一緒になって「天に栄光、地に平和」と、神に大賛美を捧げました。
過日「日本の青い空」という映画を見る機会がありました。日本国憲法がGHQの押しつけではなく、民間人の草案が手本になったという、憲法誕生の秘話がその内容でした。わが国は戦後奇跡的な復興を果たして、世界有数の経済大国になりました。しかし毎日のように悲しい事件が続いています。
神に栄光がなくては、人に平和は実現しません。今こそ私たちは真剣に神に栄光をお返しすることを考えなくてはなりません。
クリスマスは神に栄光が輝いた日です。ですから人は自らの罪を認めて、すべての栄光を神にお返しすることが〝今〟求められているのです。