聖書：サムエル記第一３：１～１４

3:1 さて、少年サムエルはエリのもとで主に仕えていた。そのころ、主のことばはまれにしかなく、幻も示されなかった。
3:2 その日、エリは自分のところで寝ていた。彼の目はかすんできて、見えなくなっていた。
3:3 神のともしびが消される前であり、サムエルは、神の箱が置かれている主の神殿で寝ていた。
3:4 主はサムエルを呼ばれた。彼は、「はい、ここにおります」と言って、
3:5 エリのところに走って行き、「はい、ここにおります。お呼びになりましたので」と言った。エリは「呼んでいない。帰って、寝なさい」と言った。それでサムエルは戻って寝た。
3:6 主はもう一度、サムエルを呼ばれた。サムエルは起きて、エリのところに行き、「はい、ここにおります。お呼びになりましたので」と言った。エリは「呼んでいない。わが子よ。帰って、寝なさい」と言った。
3:7 サムエルは、まだ主を知らなかった。まだ主のことばは彼に示されていなかった。
3:8 主は三度目にサムエルを呼ばれた。彼は起きて、エリのところに行き、「はい、ここにおります。お呼びになりましたので」と言った。エリは、主が少年を呼んでおられるということを悟った。
3:9 それで、エリはサムエルに言った。「行って、寝なさい。主がおまえを呼ばれたら、『主よ、お話しください。しもべは聞いております』と言いなさい。」サムエルは行って、自分のところで寝た。
3:10 主が来て、そばに立ち、これまでと同じように、「サムエル、サムエル」と呼ばれた。サムエルは「お話しください。しもべは聞いております」と言った。
3:11 主はサムエルに言われた。「見よ、わたしはイスラエルに一つのことをしようとしている。だれでもそれを聞く者は、両耳が鳴る。
3:12 その日わたしは、エリの家についてわたしが語ったことすべてを、初めから終わりまでエリに実行する。
3:13 わたしは、彼の家を永遠にさばくと彼に告げる。それは息子たちが自らにのろいを招くようなことをしているのを知りながら、思いとどまらせなかった咎のためだ。
3:14 だから、わたしはエリの家について誓う。エリの家の咎は、いけにえによっても、穀物のささげ物によっても、永遠に赦されることはない。」

聖書通読の助けとして聖書各巻の緒論を取り上げてきたが、今回で第９回となる。士師記、ルツ記の次がサムエル記となる。イスラエルの民は荒野での40年の後、ヨシュア記では約束の地カナンを征服し12部族が別れて住む連合体となった。カナン先住民の風習・宗教に惑わされて神様を軽んじ、他からの侵略が絶え間なかった混乱の時代も400年が過ぎようとしていた。神様は次の時代を備えられ導かれていた。

Ⅰ．基本的なことがら
・著者：サムエル記はサムエルが記したという伝承がある。サムエルが最初の重要な主人公だがサムエルは途中で召される(25:1)。最初の部分はサムエルが記したことは考えられるが、以降はサムエル以後の人物となるだろう。
・執筆年代：年代はサムエルの誕生(B.C1060頃)からダビデの晩年(B.C970年頃)までの期間となる。執筆された年代は本書が記す著者同様に余りよく分らないと言える。
・大区分：１－７章エリ、サムエルによる神政政治
８－３１章サウルの王位、治世

Ⅱ．聖書箇所のメッセージ：「サムエルの選び」３：１～１４
神様は士師(さばきつかさ)記の時代、自分勝手なイスラエルの民を無視され、無関係を決め込まれてはいない。神様は状況を見、時を待ち、人を選び、備えておられた。サムエル記冒頭に出てくるエルカナの妻ハンナには子がなく、痛切なハンナの祈りを神様は聞き届けられた。サムエルは神様の働きに献げられた者として生まれた。シロの祭司エリに幼いサムエルは預けられ、幼年時代を過ごす。時はイスラエルにとって正しく風前の灯の時期であった(3:3)。神様は幼いサムエルに国の将来に関わる大切な語りかけをされた(3:4～)。サムエルは神様の働き人として成長していく。サムエルは最後の士師(さばきつかさ)としてイスラエルをさばいた(7:15)。祭司としての働きをした(7:17)。全イスラエルの預言者であった(3:20)。サムエルのリーダーシップは世俗的なものではなく、霊的な感化にあった(9:6)。

Ⅲ．基本的なメッセージ：「神政から王政への移行」
イスラエルの民は、士師(さばきつかさ)が神様との間を執り成し、国を治める神政政治を望まなくなった。士師記にあるようにイスラエルが治めきれなくなったことは事実である。民は、周辺諸国のように王を立てるようにサムエルに求めた(8:6-22)。サムエルは人々の考えが人間的な思いから出たことは良く分かっていた。神様も世俗的な王が立てられることを快く思われなかったが認められた。ベニヤミン人キシュの息子サウルがイスラエルの初代の王として立てられた(9章)。政治の形が変わってもイスラエルの民が神様の御心を知ることができるように預言者を養成した(19:20ラマ、以後ベテル、エリコ、ギルガル)。今後の王政では預言者の働きが重要となり、その基礎をサムエルが造った。

神様は大きな転換点にサムエルを備え、サウルを備えていた。転換点は人間の側では危機であるが、神様の側では既に準備はなされている。神様は不変、永遠の御方であり、時を備え、歴史を導かれている。聖書が全世界の歴史書であることから知ることができる。