聖書:列王記第一4:29-34
4:29 神は、ソロモンに非常に豊かな知恵と英知と、海辺の砂浜のように広い心を与えられた。
4:30 ソロモンの知恵は、東のすべての人々の知恵と、エジプト人のすべての知恵にまさっていた。
4:31 彼は、どの人よりも、すなわち、エズラフ人エタンや、マホルの息子たちのヘマン、カルコル、ダルダよりも知恵があった。そのため、彼の名声は周辺のすべての国々に広まった。
4:32 ソロモンは三千の箴言を語り、彼の歌は千五首もあった。
4:33 彼は、レバノンにある杉の木から、石垣に生えるヒソプに至るまでの草木について語り、獣、鳥、這うもの、そして魚についても語った。
4:34 彼の知恵のうわさを聞いた世界のすべての王たちのもとから、あらゆる国の人々が、ソロモンの知恵を聞くためにやって来た
聖書各巻の緒論は今回で第11回となる。サムエル記第一・第二を終えて列王記に進む。サムエル記から続く歴史書となり、列王記第一・第二によって統一王国時代、分裂王国時代、バビロン捕囚に至る大きな歴史の流れをつかむことができる。
Ⅰ.基本的なことがら
著者:伝承としてはエレミヤの名が上がる。エレミヤはイスラエル王国の歴史を始まりから終わりまで記すことはできただろうが詳しくは解らない。
執筆年代:年代はダビデの晩年(B.C970年頃)からアハブ王の晩年(B.C850年頃)までの期間となる。執筆された年代は著者同様に余りよく分らないと言える。
大区分:1-11章ダビデの死、ソロモンの治世
12-22章ヤロブアムの反逆、王国の南北分裂、エリヤの活動
Ⅱ.基本的なメッセージ:「ソロモンの施政」
ソロモンはバテ・シェバを母に生まれる。権謀術数の宮廷、複数の王子の中でダビデの次の王位に就くのは神様が導かれたこと抜きには考えられない。ソロモンの栄華と称されるイスラエル王国の最盛期を迎える。ソロモンの歩みの基となったのは、神様が夢で願いは何かと問われた場面にある(3:5~14)。ソロモンに知恵と判断の心が与えられ、富も誉も長命も約束された。戦いに暮れた父ダビデの軍政とは異なりソロモンは平和時の治政であった。政治機構は複雑化した面はあり(4章)、各部族を十分満足させたかは解らない。北方のメソポタミヤに権力の隙が生まれていたので領土はユーフラテス川から地中海に及んだ(4:21)。平和を背景に通商交易は盛んとなり多くの利益を得た(10:11~23)。ソロモンの王宮は壮麗に飾られ贅を尽くしていたが、神殿建設が歴史的な事績であった(6~8章)。
Ⅲ.聖書箇所のメッセージ:「ソロモンの功罪」4:29~34
ソロモンは王としての治世のみならず、3千の箴言、歌は千五首(32節)とあるように、箴言・伝道の書・雅歌を残している。博物学的な知恵(33節)を持ち、
シエバの女王(10章)はソロモンの知恵と繁栄を確かめにやって来た。しかしソロモンも積極的な評価だけで測れない。11章にはソロモンの家庭が出てくるが、エジプトのファラオの娘始め多くの異邦の女性を妻とした。異教の神々が宮廷に祭られることになった。神様の怒り(11:9~13)に対して悔い改めることなく、王国の分裂を招いた。ソロモンは大きな事績を残したが消極面も大きかった。ソロモン後の時代は政治を行う王、祭祀を司る祭司、神様の使信を告げる預言者の3つの働きがイスラエルを支えた。真の神様への不信仰、欲望にかられた自己中心が大きくなると預言者の警告も強く響く。北王国イスラエルのオムリ王の子アハブ王の時代、世に現れたのはティシュベ人エリヤであった(17:1)。
預言者が活躍する時代は人心が神様から離れた時代である。
ソロモンは神様に愛され、神様の祝福の内に歩んだが、残念な結果を生み出していく。私たちは神様の愛に対して、愛を持って応えることのできる者となろう(ヨハネ21:15~19「私があなたを愛していることは、あなたがご存じです。」)。