聖書:歴代誌第一29:10~20

29:10 ダビデは全会衆の前で主をほめたたえた。ダビデは言った。「私たちの父イスラエルの神、主よ。あなたがとこしえからとこしえまで、ほめたたえられますように。
29:11 主よ、偉大さ、力、輝き、栄光、威厳は、あなたのものです。天にあるものも地にあるものもすべて。主よ、王国もあなたのものです。あなたは、すべてのものの上に、かしらとしてあがめられるべき方です。
29:12 富と誉れは御前から出ます。あなたはすべてのものを支配しておられます。あなたの御手には勢いと力があり、あなたの御手によって、すべてのものが偉大にされ、力づけられるのです。
29:13 私たちの神よ。今、私たちはあなたに感謝し、あなたの栄えに満ちた御名をほめたたえます。
29:14 このように自ら進んで献げる力を持っているとしても、私は何者なのでしょう、私の民は何者なのでしょう。すべてはあなたから出たのであり、私たちは御手から出たものをあなたに献げたにすぎません。
29:15 私たちは、父祖たちがみなそうであったように、あなたの前では寄留者であり、居留している者です。地上での私たちの日々は影のようなもので、望みもありません。
29:16 私たちの神、主よ。あなたの聖なる御名のために宮を建てようと私たちが準備したこの多くのものすべては、あなたの御手から出たものであり、すべてはあなたのものです。
29:17 わが神よ。あなたは心を試される方で、真っ直ぐなことを愛されるのを私はよく知っています。私は直ぐな心で、これらすべてを自ら進んで献げました。また今、ここにいるあなたの民が、自ら進んであなたに献げるのを、私は喜びのうちに見ました。
29:18 私たちの父祖アブラハム、イサク、イスラエルの神、主よ。御民が心にめぐらす思いをとこしえに守り、彼らの心をしっかりとあなたに向けさせてください。
29:19 わが子ソロモンに全き心を与え、あなたの命令とさとしと掟を守らせて、すべてを行わせ、私が準備してきた宮を建てさせてください。」
29:20 そして、ダビデは全会衆に「あなたがたの神、主をほめたたえよ」と言った。すると全会衆は、父祖の神、主をほめたたえ、主と王の前に身をかがめてひれ伏した。

聖書各巻の緒論は歴代誌第一で第13回となる。サムエル記、列王記で統一王国時代、分裂王国時代、南北王国の滅亡、バビロン捕囚と言う歴史を見てきた。同時代である歴代誌は列王記と違う視点から記している。冒頭アダムからのイスラエルの系図となる。王国時代の記録だが、時代を超えた神様の摂理、支配に目を向けさせる。歴代誌第一はダビデ、歴代誌第二はソロモンについて多く記すが、両王のサムエル記・列王記には記されなかった姿が描かれている。北王国イスラエルの記述は最小限に止め、南王国ユダの記述が中心になることも特色である。ダビデの裔からメシアが現れることへの待望である。

Ⅰ.基本的なことがら
著者:伝承としてはエズラの名が上がる。歴代誌とエズラ記のつながりは古来認められてきた。歴代誌の結語はエズラ記の序言とほぼ一致する。
執筆年代:エズラであれば前5世紀後半となる(エズラのイスラエル帰還が
前458年)。
大区分:1-9章系図:アダムからヤコブ、ヤコブからダビデの子孫、
諸部族
10-29章ダビデの治世、神殿建設の準備

Ⅱ.基本的なメッセージ:「礼拝」
サムエル記で描かれているダビデの姿ではなく、歴代誌の特色は礼拝者として描かれている。自分は許されなかったが次代ソロモンの神殿建設のために「全力を尽くし」(29:2)た。金銀を始め貴重な品々を集め、木材・鉄・銅など建築資材を入念に準備したことが描かれている。歴代誌第二ではソロモンのさまざまな業績は他に譲り、神殿建設を行い、神殿を奉献した礼拝者として描かれている。歴代誌は、祭司エズラが記したと言われるが、神殿で仕える祭司、レビ人の記述も多く真の神様への礼拝を中心にしている。

Ⅲ.聖書箇所のメッセージ:「ダビデの祈り」29:10~20
歴代誌は礼拝で貫かれている。歴戦の勇士、王国の指導者としてのダビデの姿は本書全体から見れば少ない。バテ・シェバの件、アブサロムの反乱等、失敗や過ちの中で葛藤した姿もわずかである。代わって、ダビデは神の箱をキルヤテ・エアリムからエルサレムに迎え入れた。ダビデは許されなかったが、次代のソロモンが神殿建設を果たせるように準備した仕え人としての姿がある。自らを低くし、自分ではなくソロモンが完成に導くことをダビデは喜びとしていた。神様の導かれる歴史はアダムから始まり、終わりの日の完成を目指してつながっている。決して一人だけの業では無い。自分が立ち働くことと同様に、次の世代への継承は大事なことであるとダビデから知る。
ダビデの感謝の祈りがここに記されている。詩篇150篇中ダビデの作と題されている詩篇が73篇あるように優れた詩人であった。ダビデの祈りは格調高い。神様の偉大さへの賛美がささげられ(10-13節)、自らの謙り(14-16節)、純粋な真直ぐな心の大切さ(17-18節)、子ソロモンと会衆への祝福(19-20節)が祈られている。全会衆は主の御前にひれ伏す。

ダビデは戦いに戦い、首都を定め、政治を行い、建国に努めた。信仰の表明としての神殿建設の準備は白眉となる。