聖書各巻緒論41・新約2・福音書2

聖書:マルコ10:35~45

10:35 ゼベダイの息子たち、ヤコブとヨハネが、イエスのところに来て言った。「先生。私たちが願うことをかなえていただきたいのです。」
10:36 イエスは彼らに言われた。「何をしてほしいのですか。」
10:37 彼らは言った。「あなたが栄光をお受けになるとき、一人があなたの右に、もう一人が左に座るようにしてください。」
10:38 しかし、イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、自分が何を求めているのか分かっていません。わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることができますか。」
10:39 彼らは「できます」と言った。そこで、イエスは言われた。「確かにあなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることになります。
10:40 しかし、わたしの右と左に座ることは、わたしが許すことではありません。それは備えられた人たちに与えられるのです。」
10:41 ほかの十人はこれを聞いて、ヤコブとヨハネに腹を立て始めた。
10:42 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた。「あなたがたも知っているとおり、異邦人の支配者と認められている者たちは、人々に対して横柄にふるまい、偉い人たちは人々の上に権力をふるっています。
10:43 しかし、あなたがたの間では、そうであってはなりません。あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、皆に仕える者になりなさい。
10:44 あなたがたの間で先頭に立ちたいと思う者は、皆のしもべになりなさい。
10:45 人の子も、仕えられるためではなく仕えるために、また多くの人のための贖いの代価として、自分のいのちを与えるために来たのです。」

先週から聖書緒論を再開した。新約聖書の第二巻マルコの福音書を開く。

Ⅰ.マルコの福音書の概観
マルコはペテロの通訳であったという。ペテロはペテロ第一5:13で「私の子マルコ」と呼んでいる。使徒12:12で、マルコの母の家はエルサレムで信徒たちが集まる大きな家であったことが分かる。マルコはバルナバの従兄弟(コロサイ4:4)であり、バルナバを通してパウロと関わった。パウロとバルナバによる第一回伝道旅行でマルコも助手として同行した(使徒13:5)。バルナバの出身地キプロス島から小アジアに渡り、ペルゲからタウルス山脈に分け入る厳しさに恐らく耐えられなかった。出発地のアンティオキアにも寄らず、故郷のエルサレムに帰ってしまった。パウロは第二回伝道旅行ではシラスを選んだ。バルナバはマルコを導き、ペテロもマルコと共に働いた。パウロも後に「私の同労者」(ピレモン24)とマルコを呼び、「彼は私の努めのために役に立つ」(テモテ第二4:11)と記したようにマルコの成長を見る。マルコの福音書は最も早く書かれ原福音書と呼ばれる。マルコはペテロから聞いたイエス様の伝記をまとめた。

Ⅱ.神様に従う者
マルコの福音書からこの箇所が開かれてきた。少し前の32節から読むとイエス様は決然とエルサレムに向かわれていく。そこで敵対者に殺されるが、三日後によみがえるという救いの業を語られた。その直後にヤコブ・ヨハネ兄弟が、イエス様が支配される国で左右の御座に着かせてほしいと言い、人間的な栄誉心、利得を求めた。ご自分をささげられる尊い救いの話をされた後に、自分の利益を求める醜い話が出てくる。残りの10人の弟子たちもこの言葉に怒り始めるので彼らも同類である。
イエス様はこの2人を決して怒っておられない。何も理解せずに、杯を飲む、従うという2人を退けられなかった。偉くなる、先頭に立つ者は、仕える者、しもべになれとイエス様は言われた。神の国が進んでいく中で偉い者、先頭に立つ者とは、この世とは反対に、私心無く、神様に従う者であろう。本人の思いではない、周囲の評価でもない、神様の御心によってなされる。

Ⅲ.神様に従ったマルコ
マルコもかつては自分の思いでペルゲからエルサレムに帰ってしまった。神様の御心に従えなかった大きな失敗であった。彼を教えたペテロも、イエス様が捕縛された大祭司の中庭で3度知らないと言う大きな失敗を犯した。マルコが立ち直って、より大きな神様の働き人にされるにはペテロの存在は大きかった。イエス様がペテロのために祈られた「あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」(ルカ22:31-34)は成就した。ここで愚かなことを言ったヤコブ、ヨハネもそれぞれの道で主に従い通した生涯を送った。ヤコブは12使徒の最初の殉教者となり、ヨハネは最後まで生き残って黙示録を記した。

マルコ、ペテロ、ヤコブ、ヨハネもそれぞれに失敗を犯したが、神様に寄りすがることを通して、より深く豊かな神様の働きへと導かれた。