聖 書:ルカによる福音書 第5章1~11節
5:1 さて、群衆が神の言を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、
5:2 そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、舟からおりて網を洗っていた。
5:3 その一そうはシモンの舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そしてすわって、舟の中から群衆にお教えになった。
5:4 話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。
5:5 シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。
5:6 そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。
5:7 そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。
5:8 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。
5:9 彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。
5:10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。
5:11 そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。

わたしは20代の頃、数年間スキューバダイビングにはまったことがありました。海に潜るという経験を通して港や浜辺、船上で眺めるのとまったく違った海の豊かさが海底にはあることに目が開かれて感動しました。スキューバダイビングで海を観察することで、海に対するそれまでの印象が塗り替えられました。桟橋から眺めて魚は見当たらなくても、潜ってみると思いがけず魚影が濃く、小魚が群れを成して回遊していました。今日の箇所に出てくる奇蹟の大量を思い出します。

1. 深みに漕ぎ出す
イエス様はゲネサレ湖(ガリラヤ湖)の漁師たちを弟子に召し出します。マタイとマルコに福音書の並行記事によると、イエス様は漁を終えて浜辺にいた漁師を弟子に招きます。本日のルカの記事だけが他の二つとは異なり印象的です。漁師のシモン(ペテロ)とヤコブとヨハネは、イエス様による大漁の奇蹟を目の当たりします。その体験よって彼らは自分たちの罪深さが示されて、同時にイエス様の神性に引き寄せられ弟子になって、神の国の福音を宣べ伝えることを決意させます。
イエス様は神のことばを聞こうと押し迫ってきた群集を教えるために、シモンに舟を出すように頼み船に乗り込みます。話終わったイエス様はシモンに「沖へこぎ出し(深みに漕ぎ出し/新改訳)、網をおろして漁をしてみなさい」(4)と言われます。魚を獲るための順序は宣教に通じるものがあります。「沖へこぎ出し」と、最初は出かけていきなさい言われます。次に「網をおろして」とは、魚を捕まえるには仕掛け(宣教の方策)が必要です。最後は「漁をしてみる」つまり集会を開くことです。

2. お言葉ですから
正直言ってイエス様のこのことばにシモンは少々面喰いました。シモンは漁の腕前は確かで、ガリラヤ湖の魚群のポイントを熟知していました。にもかかわらず昨晩は夜通し働いても、魚は一匹も獲れませんでした。労多くして功少なし。シモンたちは夜が明けたのでもう漁はあきらめて、魚網はきれいに洗ってしまいました。てっきりイエス様はそんな経緯を知らないで漁をしなさいと言われたとシモンは思っていました。シモンはユダヤ教の教えについては権威があるイエス様でも、魚釣りに関しては素人同然と高を括っていました。しかし無下に断るわけにもいかずに、何の気なしに口を衝いて出たのが「お言葉ですから」(5)でした。ところがシモンが網を下ろすとおびただしい魚が入り、大漁の重みで二艘の舟は沈みかけました。神の恵みはいつでも人の経験や知識の偏執、常識を超えて与えられ信仰がそのたびに養われます。わたしたちはかなわぬ夢とあきらめかけていたことなどを、信仰を復興をさせて「お言葉ですから」ともう一度取り組もうではありませんか。

3. 人間をとる漁師
シモンは大漁によって神のみわざに驚き畏れ、不信仰を悔い改めて神の子のお言葉を疑った自分の罪深さから、「わたしから離れてください」(8)と言って主の御前にひれ伏します。シモンはイエス様を「先生」(5)と呼んで敬っているようですが、大漁の奇蹟を見た後は「主よ」(8)と言い換えています。イエス様はうなだれるシモンに期待しことばをかけます。「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」(10)と促された。すぐさまシモンは「舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。」(11)のでした。商売の道具の舟や網などすべてを捨てて、家族も後に残してイエス様に従いました。わたしたちも主の弟子です。既成概念を取り除いて今自分ができる宣教に取り組み、大漁は神様に期待しましょう。