聖 書:士師記7章15~23節

(15) ギデオンは夢の物語とその解き明かしとを聞いたので、礼拝し、イスラエルの陣営に帰り、そして言った、「立てよ、主はミデアンの軍勢をあなたがたの手にわたされる」。(16) そして彼は三百人を三組に分け、手に手にラッパと、からつぼとを取らせ、つぼの中にたいまつをともさせ、(17) 彼らに言った、「わたしを見て、わたしのするようにしなさい。わたしが敵陣のはずれに達したとき、あなたがたもわたしのするようにしなさい。(18) わたしと共におる者がみなラッパを吹くと、あなたがたもまたすべての陣営の四方でラッパを吹き、『主のためだ、ギデオンのためだ』と言いなさい」。(19) こうしてギデオンと、彼と共にいた百人の者が、中更の初めに敵陣のはずれに行ってみると、ちょうど番兵を交代した時であったので、彼らはラッパを吹き、手に携えていたつぼを打ち砕いた。(20) すなわち三組の者がラッパを吹き、つぼを打ち砕き、左の手にはたいまつをとり、右の手にはラッパを持ってそれを吹き、「主のためのつるぎ、ギデオンのためのつるぎ」と叫んだ。(21) そしておのおのその持ち場に立ち、敵陣を取り囲んだので、敵軍はみな走り、大声をあげて逃げ去った。(22) 三百人のものがラッパを吹くと、主は敵軍をしてみな互に同志打ちさせられたので、敵軍はゼレラの方、ベテシッタおよびアベルメホラの境、タバテの近くまで逃げ去った。(23) イスラエルの人々はナフタリ、アセルおよび全マナセから集まってきて、ミデアンびとを追撃した

 ギデオン協会は1898年秋、ウィスコンシン州の小さなホテルでジョン・H・ニコルソンとサムエル・E・ヒルが偶然相部屋で夜を明かしたとき、お互いにクリスチャンであることを証し、共に聖書を読み、祈ったことから始まった。1899年5月「クリスチャンで旅行する実業家達が互いに交わり、個人的に立証し、共に主イエスのために労しよう」との決意が表明され、士師記6~7章から“ギデオン”と定めた。わが国においては1950年9月1日に東京支部がつくられたのが始まりである。
ギデオンは神に召された士師(さばきづかさ)で、「伐採者ー勇猛な戦士」の意味である。士師はカナン占領から王国設立までの間における、イスラエルの軍事的、政治的指導者を指し、12人を数える。ギデオンはBC1150年頃に活躍した最も顕著な士師の一人である。
Ⅰ.選ばれた兵士たち(少数派)
 当時のイスラエルはミデアン人をはじめとする先住民の略奪に怯え苦しんでいた。時に神はイスラエルを救うために、マナセ族に属するギデオンを士師として選ばれた。ギデオンは「わたしの氏族はマナセのうちで最も弱いものです。・・・父の家族のうちで最も小さいものです」(6:15)と謙遜している。神はこのような砕かれた器を用いられるのである。いよいよハロデの泉のほとりに陣を取った時に、神は32,000人の兵士を二つの方法を通して、何とその1割にも満たない300人にまで選抜された。第一は「恐れおののく者」、第二は「ひざを折り、かがんで水を飲む者」の除外であった。これは「イスラエルが自力で勝ったと思い上がらないためため」であった。神はご自身の栄光のために砕かれた少数派を用いられる。
Ⅱ.素朴な三つの武器
 ビリー・グラハムはキリスト者には「サタンと肉とこの世」という敵がいると教えている。確かに人生には多くの戦いがあり、敵が存在している。イスラエル人にとっての当面の敵は、「ミデアンびと、アマレクびとおよびすべての東方にいる民」であって、その人数は「いなご」のように、そのらくだは「海べの砂」のように多かったのである。(7:12)。神は「ミデアンとすべての軍勢を彼の手にわたされる」という意味の夢を通してギデオンを励まされた。(7:9-14)。そこで彼は精兵300人を三組に分け、それぞれにラッパとつぼとたいまつを武器としてとらせた。それはみな強力な武器ではなく、むしろ粗末な武器であった。神はご自身の戦いのために粗末な武器を用いられる。
 我らにとっての武器は、ラッパは信仰の証、つぼはみ言葉を蓄えた土の器、たいまつは燃えて輝く聖霊を表していると考えられる。
Ⅲ.勝利の戦術と意外な展開
ギデオンの戦いは奇襲作戦であった。三組の軍勢が中更の初めに三つの武器を持って敵陣に侵入した。その戦術はまずラッパを吹くこと、隠し持ったつぼを打ち砕くこと、たいまつをとることであった。そして「主のためのつるぎ、ギデオンのためのつるぎ」と叫んだのである。敵陣はこの奇襲作戦に対応出来ないばかりか、意外な同士討ちに発展し、敗北に至ったのである。
神はいつもご自身の戦いのために、砕かれた器を用いられる。我らは土の器に過ぎないが、その中に宝を与えられている。宝とは主イエスご自身であり、み言葉でもあろう。み言葉はいつも聖霊と共に働かれる。器は砕かれなくては光を表すことが出来ない。頑なな器こそ主の働きの最大の障害である。