聖  書:創世記6章5節~7章1節

(5) 主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。(6) 主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、(7) 「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。(8) しかし、ノアは主の前に恵みを得た。(9) ノアの系図は次のとおりである。ノアはその時代の人々の中で正しく、かつ全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。(10) ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生んだ。(11) 時に世は神の前に乱れて、暴虐が地に満ちた。(12) 神が地を見られると、それは乱れていた。すべての人が地の上でその道を乱したからである。(13) そこで神はノアに言われた、「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたから、わたしは彼らを地とともに滅ぼそう。(14) あなたは、いとすぎの木で箱舟を造り、箱舟の中にへやを設け、アスファルトでそのうちそとを塗りなさい。(15) その造り方は次のとおりである。すなわち箱舟の長さは三百キュビト、幅は五十キュビト、高さは三十キュビトとし、(16) 箱舟に屋根を造り、上へ一キュビトにそれを仕上げ、また箱舟の戸口をその横に設けて、一階と二階と三階のある箱舟を造りなさい。(17) わたしは地の上に洪水を送って、命の息のある肉なるものを、みな天の下から滅ぼし去る。地にあるものは、みな死に絶えるであろう。(18) ただし、わたしはあなたと契約を結ぼう。あなたは子らと、妻と、子らの妻たちと共に箱舟にはいりなさい。(19) またすべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二つずつを箱舟に入れて、あなたと共にその命を保たせなさい。それらは雄と雌とでなければならない。(20) すなわち、鳥はその種類にしたがい獣はその種類にしたがい、また地のすべての這うものも、その種類にしたがって、それぞれ二つずつ、あなたのところに入れて、命を保たせなさい。(21) また、すべての食物となるものをとって、あなたのところにたくわえ、あなたとこれらのものとの食物としなさい」。(22) ノアはすべて神の命じられたようにした。(7:1) 主はノアに言われた、「あなたと家族とはみな箱舟にはいりなさい。あなたがこの時代の人々の中で、わたしの前に正しい人であるとわたしは認めたからである。

 聖書についてあまり詳しく知らない人でも、ノアの箱舟の話はよく知っています。人々の関心はそれが歴史的な事実なのか、考古学や地質学的な意義はどこにあるのか、といった方面に向けられ、本来のメッセージに関しては無頓着です。ヘブル書は「信仰によって、ノアはまだ見ていない事がらについて御告げを受け、恐れかしこみつつ、その家族を救うために箱舟を造り、その信仰によって世の罪をさばき、そして、信仰による義を受け継ぐ者となった。」(11:7)と記しています。ノアの箱舟の話は創世記6章から9章迄に記されています。本日はノアの信仰の面に焦点を絞って考えて見ます。

Ⅰ.ノアの生きた時代と彼の品性
  アダムの誕生を起点とした人類の歴史をアダム暦と言います。アダムは930歳まで生きますが8代後のレメクが56歳になるまで生存していたことになります。ノアの誕生は1056年ですからアダムの死から126年後になります。洪水はノアが600歳の時、アダム暦1656年に起きました。聖書はその時代について「主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、『わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう』」(5-7)、「時に世は神の前に乱れて、暴虐が地に満ちた、神が地を見られると、それは、乱れていた。すべての人が地の上でその道を乱したからである」(11)と記しています。そうした時代にあってノアは「主の前に恵みを得た」(8)、「ノアはその時代の人々の中で正しく、かつ全き人であった。ノアは神と共に歩んだ」(9)のです。

Ⅱ.神の審判とノアの信仰

  天地創造の神が「悔い、心を痛められる」ということは尋常なことではりません。そこで神はノアに「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたから、わたしは彼らを地と共に滅ぼそう」(13)と心の丈を披瀝されました。「ノアはまだ見ていない事がらについて御告げを受け」たのです。審判の神は、愛の神でもあります。洪水による審判からノアとその家族を救うために箱舟の製造をノアに命令されました。箱舟の長さは300キュピト(約150m)、幅50キュピト(約25m)、高さ30キュピト(約15m)で三階建です。箱舟の中には洪水後の生活のために必要なすべての雌雄の生き物などを入れるように命令されました。こうした計画は奇想天外なもので、だれ一人信じ従う者はありません。そうした中で「ノアはすべて神の命じられたようにした」(21)のです。ノアは死を経ずして天に召されたエノク、メトセラ、レメク、ノアと続いた信仰の家系につながる人物です。ノアはエノク同様に「神とともに歩んだ」(9)信仰の人でした。私たちの生涯においても信仰の継承を決しておろそかにしてはなりません。 

Ⅲ.ノアの信仰から学ぶ再臨信仰
  マタイはキリストの再臨に関連して「人の子の現れるのも、ちょうどノアの時のようであろう。すなわち、洪水の出る前、ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていた。そして洪水が襲ってきて、いっさいのものをさらって行くまで、彼らは気がつかなかった。人の子の現れるのも、そのようであろう」(24:37)とノアの事例を引用しています。私たちが学ぶべき要点は、第一は神の言葉の真実性、第二は神の審判の突発性、第三は神への全き信仰と服従です。現代の暴虐ぶりはノアの時代の比ではありません。キリストは新天新地の再創造のために必ず再臨されます。ノアの信仰は私たちの再臨信仰に対する素晴らしいひな型です。
 
  私達は歴上において再臨に最も近い時代に生存しています。「斧がすでに木の根もとに置かれている」(マタイ3:10)のです。ノアに見倣う信仰者とならせて頂きましょう。