聖  書:創世記 第12章1節~9節
12:1 時に主はアブラムに言われた、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。
12:2 わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう。
12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべてのやからは、あなたによって祝福される」。
12:4 アブラムは主が言われたようにいで立った。ロトも彼と共に行った。アブラムはハランを出たとき七十五歳であった。
12:5 アブラムは妻サライと、弟の子ロトと、集めたすべての財産と、ハランで獲た人々とを携えてカナンに行こうとしていで立ち、カナンの地にきた。
12:6 アブラムはその地を通ってシケムの所、モレのテレビンの木のもとに着いた。そのころカナンびとがその地にいた。
12:7 時に主はアブラムに現れて言われた、「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」。アブラムは彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
12:8 彼はそこからベテルの東の山に移って天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。そこに彼は主のために祭壇を築いて、主の名を呼んだ。
12:9 アブラムはなお進んでネゲブに移った。

芭蕉(1644年~1694年)は「奥の細道」の序文で「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」と詠んでいます。最後の句は「旅に病んで/夢は枯野を/かけめぐる」です。アブラハムもまた信仰による旅の生涯でした。

Ⅰ.信仰によって旅立つアブラハム(聖別)(1~4)
「時に主はアブラムに言われた。」この「時」を期してアブラムは「多くの国民の父」(創17:4-5)として召され、イスラエル民族の歴史が始まるのです。主は「あなたは国を出て,親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい」という命令と共に、「あなたは祝福の基となる」(2)などの約束をされました。父テラはカルデヤのウルを出てカナンの地に向かいますが、途中のハランで亡くなります。アブラムは異教の地に残るか、カナンに向かうかの決断に迫られます。「信仰によって,アブラハムは、受け継ぐべき地に出て行けとの召しをこうむった時、それに従い,行く先を知らないで出て行った」(ヘブル11:8)。「聖別」は旅のスタート(出立)を象徴しています。

Ⅱ.神の恵みに応えるアブラハム(祭壇)(4~6)
「アブラムは主が言われたようにいで立った」(4)。妻サライ、弟の子ロト、ハランで得た人々が同行しました。彼らは神の導きによってカナンの地シケムに着きました。神は「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」と臨在をもって約束されました。アブラムは「主のために、そこに祭壇を築いた」(7,8)のです。「祭壇」は礼拝であり、犠牲の供え物を献げる行為を示しています。主イエスは私たちの贖いの供え物となって下さいました。「あなたがたのからだを、神に喜ばれる、生きた、聖なる供え物としてささげなさい。それが、あなたがたのなすべき霊的な礼拝である」(ローマ12:1)。神はアブラハムにイサクを献げるという訓練をされました(創22章)。恵まれた信仰生活は、神の恵みに応える祭壇にかかっています。「祭壇」は旅のプロセス(道程)を象徴しています。

Ⅲ.旅のゴールを見続けるアブラハム(天幕)(7~9)
「彼はベテルの東の山に移って天幕を張った」(8)。アブラハムは「信仰によって,他国にいるようにして約束の地に宿り、~幕屋に住んだ」(ヘブル11:9)。「地上では旅人であり寄留者であることを,自ら言いあらわした」(同13)。「彼らが望んでいたのは、もっと良い、天にあるふるさとであった」(同16)。この世では様々な試練が私たちを待ち構えています。試練に勝利する秘訣は旅のゴールである天国を見続けることです。「天幕」は旅のゴール(目的地)を象徴しています。

アブラハムの信仰はイサク、ヤコブと継承されて行きました。しかしアブラハムの信仰も決して完璧なものではなく、すべては神のみ業でありました。今私たちに求められているのは、信仰の旅路のスタート、プロセス、ゴールをしっかり見続ける信仰に堅く立つことではないでしょうか