聖書:申命記30:11~20

31:11 イスラエル全体が、主が選ばれる場所に、あなたの神、主の前に出るためにやって来たとき、あなたはイスラエル全体の前で、彼らの耳にこのみおしえを読んで聞かせなければならない。
31:12 民を、男も女も子どもも集めなさい。あなたの町囲みの中にいる寄留者も。彼らがこれを聞いて学び、あなたがたの神、主を恐れ、このみおしえのすべてのことばを守り行うようにするためである。
31:13 これを知らない、彼らの子どもたちもこれを聞き、あなたがたがヨルダン川を渡って所有しようとしている地で、彼らが生きるかぎり、あなたがたの神、主を恐れることを学ばなければならない。」
31:14 それから主はモーセに言われた。「今や、あなたの死ぬ日が近づいている。ヨシュアを呼び寄せ、あなたがたは会見の天幕に立て。わたしは彼に命令を下そう。」モーセとヨシュアは行って、会見の天幕に立った。
31:15 主は天幕で雲の柱のうちに現れた。雲の柱は天幕の入り口にとどまった。
31:16 主はモーセに言われた。「見よ、あなたは間もなく先祖とともに眠りにつこうとしている。この民は入って行こうとしている地の異国の神々を慕い、自分たちのうちで淫行を行い、わたしを捨てて、わたしがこの民と結んだわたしの契約を破る。
31:17 その日、わたしの怒りはこの民に対して燃え上がり、わたしも彼らを捨て、わたしの顔を彼らから隠す。彼らが焼き尽くされ、多くのわざわいと苦難が彼らに降りかかると、その日この民は、『これらのわざわいが私たちに降りかかるのは、私たちのうちに私たちの神がおられないからではないか』と言う。
31:18 わたしはその日、彼らが行ったすべての悪のゆえに必ずわたしの顔を隠す。 彼らがほかの神々の方に向かったからである。
31:19 今、次の歌を書き記し、それをイスラエルの子らに教え、彼らの口にそれを置け。この歌をイスラエルの子らに対するわたしの証しとするためである。
31:20 わたしが彼らを、彼らの父祖たちに誓った乳と蜜の流れる土地に導き入れるとき、彼らは食べて満ち足り、肥え太り、そして、ほかの神々の方に向かってこれに仕え、わたしを侮ってわたしの契約を破る。

聖書各巻の緒論を始め、その第五回となる。最初の区分に当たるトーラー・律法の書が申命記で閉じられる。

Ⅰ.基本的なことがら
著者:伝統的な受け止めとしてモーセ(モーセ五書の第五巻)
「申命」という言葉は重ねて命令するという意味である。モーセが天に帰る前にイスラエルの民に神様の使信を改めて語り聞かせる。申命と言う言葉は漢語である。2巻後の士師も漢語であり明治初頭からの漢訳聖書の影響を残している。1:2にあるように荒野の40年が後1か月で満ちようとしていた。モーセが民に説教を語るのに7日間を費やしたという伝承がある。
執筆年代:出エジプトの年代を早期説としてB.C.1450年頃。
大区分:1~30章モーセの説教(1)1~4章
モーセの説教(2)5~26章
祝福と反祝福27~28章
モーセの説教(3)29~30章
31~34章荒野の40年間の終幕

Ⅱ.基本的なメッセージ:「律法の書の締めくくり」
モーセ五書の内、結語となる申命記は締めくくりとしての重要性を帯びている。イエス様が律法の第一のものと語られた(マルコ12:28~33他)のは、全てを尽くして神を愛すること(申命6:4~5)、隣人を自分と同じように愛すること(レビ19:18、申命記にも流れている)であり申命記の復命である。ユダヤ人の家庭教育の根本にある「シェマー」(信仰告白と言える)は申命6:4~5が中心にある。イエス様が公生涯の始まりに悪魔の誘惑に会われた時、イエス様の御言の引用は3回ともに申命記であった。かつてアダム・エバは誘惑に負けた。イスラエルの民は荒野で失敗した。イエス様は誘惑を退け勝利され、律法を全うされた。律法の書は申命記で閉じるが、イエス様によって私たちは律法の成就に与らせていただく。

Ⅲ.基本的なメッセージ:「神様の教えの明快さ」30:11~20
神様は複雑な厳しい教えを命じられてはいない。「難しすぎる」「遠くかけ離れたもの」「天にある」「海のかなたにある」ものではなく、「すぐ近く」「口にあり」「心にあって」「行うことができる」(11~14節)とある。その結果も「いのちと幸い」「死とわざわい」(15節)とあるように明快である。世間的なキリスト教のイメージは高尚な、観念的なというものもあろうかと思う。「あなたはいのちを選びなさい」(19節)に御心は示されている。神様に背くこと反することは死と災いを招く。神様の恵みと愛、あわれみは確かであるが、低きに流れやすい私たちにとって、恐れではないある程度の緊張感は必要である。

申命記は私たちに神様に従う道を教え、祝福と恵みを語る。申命記はまたモーセに与えられた預言の言葉が残されている。「あなたの神、主はあなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のような一人の預言者をあなたのために起こされる。」(18:15)とあるが、イスラエルの歴代の預言者であり、メシア・救い主イエス様を指している。変貌山(マタイ17章他)にモーセとエリヤは登場する。モーセとイエス様、律法と福音は結び付いている。