聖書各巻緒論(15)

エズラ記1:1~11

1:1 ペルシアの王キュロスの第一年に、エレミヤによって告げられた主のことばが成就するために、主はペルシアの王キュロスの霊を奮い立たせた。王は王国中に通達を出し、また文書にもした。
1:2 「ペルシアの王キュロスは言う。『天の神、主は、地のすべての王国を私にお与えくださった。この方が、ユダにあるエルサレムに、ご自分のために宮を建てるよう私を任命された。
1:3 あなたがた、だれでも主の民に属する者には、その神がともにいてくださるように。その者はユダにあるエルサレムに上り、イスラエルの神、主の宮を建てるようにせよ。この方はエルサレムにおられる神である。
1:4 あとに残る者たちはみな、その者を支援するようにせよ。その者がどこに寄留しているにしても、その場所から、その土地の人々が、エルサレムにある神の宮のために進んで献げるものに加え、銀、金、財貨、家畜をもってその者を支援せよ。』」
1:5 そこで、ユダとベニヤミンの一族のかしらたち、祭司たち、レビ人たちは立ち上がった。エルサレムにある主の宮を建てるために上って行くように、神が彼ら全員の霊を奮い立たせたのである。
1:6 彼らの周りの人々はみな、銀の器、金、財貨、家畜、選りすぐりの品々、そのほか進んで献げるあらゆる物をもって彼らを力づけた。
1:7 キュロス王は、ネブカドネツァルがエルサレムから持ち出して、自分の神々の宮に置いていた主の宮の器を運び出させた。
1:8 ペルシアの王キュロスは財務官ミテレダテに命じてこれを取り出し、その数を確かめさせ、ユダの首長シェシュバツァルに渡した。
1:9 その数は次のとおりであった。金の皿三十、銀の皿一千、香炉二十九、
1:10 金の鉢三十、予備の銀の鉢四百十、その他の器一千。
1:11 金や銀の用具は全部で五千四百あった。捕囚の民がバビロンからエルサレムに上ることを許されたとき、シェシュバツァルはこれらの物をみな一緒に携えて上った。

聖書各巻の緒論は第15回となる。サムエル記、列王記、歴代誌を通してイスラエルの王国時代を見てきた。神様の御心を求めない、神様に従わない、自分を通そうとする人間の姿を見た。その結果、南北両王国の滅亡とバビロン捕囚に至る。神様はイザヤ等の預言者によって回復の約束をなされていた(イザヤ44:28、45:1、エレミヤ25:11)。エズラ記はその成就になる。

Ⅰ.基本的なことがら(著者、年代は前回に同じ)
著者:一人称で語られている。エズラ記、及びネヘミヤ記はエズラが記したことに間違いはないと思える。
執筆年代:諸説は有るがエズラのイスラエル帰還が聖書の記述通り前458年として、前440年頃と考えられる。
大区分:1-2章捕囚からの解放
3-6章神殿再建と奉献式
7-10章エズラの活動と宗教改革

Ⅱ.聖書箇所のメッセージ:「キュロス王の命令」1:1~11
神様はイスラエルに対してバビロン捕囚という厳しい裁きを下されたが、回復を約束され時が満ちて(歴代誌第二36:21「70年」)実現へと導かれた。神様は異邦、異教の王の心を感動させられて用いられた。神様が歴史に直接介入される例を見る。しかも、キュロスは不承不承、強いられてではなく、積極的な支援を命じている。「そこで、ユダとベニヤミンの一族のかしらたち、祭司たち、レビ人たちは立ち上がった。エルサレムにある主の宮を建てるために上って行くように、神が彼ら全員の霊を奮い立たせたのである。」(1:5)とある。異邦の王にさえ働かれる神様は、御自分の民の心に聖霊を送って心に感動を与え、実際の力を与えられた。私たちも良き神様の業のために心動かされよう。

Ⅲ.基本的なメッセージ:「神殿の再建と信仰の再建」
ユダヤ人はエズラを第二のモーセと呼ぶ。奴隷の地エジプトから約束の地へと連れ上ったモーセと同じように、辱しめを受けたバビロンからエルサレムを目指した。2章には各支族の詳しい人数が出てくる。彼らは烏合の衆ではなく自覚的な意識を持った人々であった。3章ではエルサレムに到着し、ささげ物が献げられて神殿再建工事が始まった。賛美と感謝、喜びの声と泣き声が一つになった。4章には悪が働き、妨害がなされる。「ユダとベニヤミンの敵たち」はアッシリヤによる北王国滅亡後に国に残ったサマリヤ人である。同族でありながらも南北王国は敵対関係にありこの時も変わらず、新約時代に至る。脅し、買収、偽りの告訴など執拗な反対を行って工事を中断させた。結果18年間も工事は止められた「ダレイオスの治世の第二年まで中止されたままになった。」(4:24)。神様は黙っておられず、ハガイ、ゼカリヤを立て預言され、神の民は再び立ち上がる(5:1・2)。困難にも関わらず神殿は完成、奉献式が行われる(6:14~22)。7章からはエズラによる第二次帰還、律法の公布、宗教改革を行った。

荒れ果てたエルサレム神殿の復興も急がれた。信仰の回復、異教・異邦との訣別が必要とされた。エズラは外なる神殿、内なる信仰の双方をここで建て上げる務めを果たした。