聖書各巻緒論32・預言書10

聖書:ヨナ書4:1~11

4:1 ところが、このことはヨナを非常に不愉快にした。ヨナは怒って、
4:2 主に祈った。「ああ、主よ。私がまだ国にいたときに、このことを申し上げたではありませんか。それで、私は初めタルシシュへ逃れようとしたのです。あなたが情け深くあわれみ深い神であり、怒るのに遅く、恵み豊かで、わざわいを思い直される方であることを知っていたからです。
4:3 ですから、主よ、どうか今、私のいのちを取ってください。私は生きているより死んだほうがましです。」
4:4 主は言われた。「あなたは当然であるかのように怒るのか。」
4:5 ヨナは都から出て、都の東の方に座った。そしてそこに自分で仮小屋を作り、都の中で何が起こるかを見極めようと、その陰のところに座った。
4:6 神である主は一本の唐胡麻を備えて、ヨナの上をおおうように生えさせ、それを彼の頭の上の陰にして、ヨナの不機嫌を直そうとされた。ヨナはこの唐胡麻を非常に喜んだ。
4:7 しかし翌日の夜明けに、神は一匹の虫を備えられた。虫がその唐胡麻をかんだので、唐胡麻は枯れた。
4:8 太陽が昇ったとき、神は焼けつくような東風を備えられた。太陽がヨナの頭に照りつけたので、彼は弱り果て、自分の死を願って言った。「私は生きているより死んだほうがましだ。」
4:9 すると神はヨナに言われた。「この唐胡麻のために、あなたは当然であるかのように怒るのか。」ヨナは言った。「私が死ぬほど怒るのは当然のことです。」
4:10 主は言われた。「あなたは、自分で労さず、育てもせず、一夜で生えて一夜で滅びたこの唐胡麻を惜しんでいる。
4:11 ましてわたしは、この大きな都ニネベを惜しまないでいられるだろうか。そこには、右も左も分からない十二万人以上の人間と、数多くの家畜がいるではないか。」

 

聖書各巻を開いてきた。旧約の最後は預言書が続き10番目がヨナ書になる。他の預言書に比べてヨナ書はとても特徴がある。預言者ヨナの心の動きを知り、個人の信仰を考えさせられる。神様の取り扱いを見ることができる。ドラマチックな話でCSでも良く話す箇所になる。

Ⅰ.ヨナ書の特徴
最初にアミタイの子ヨナとある(1:1)。列王第二14:25には同じ名前が記され、北王国イスラエルのヤロブアム2世の時代になる。ヨナの時代は紀元前8世紀、使命は敵国のアッシリア・ニネベに遣わされた。
ヨナ書は他の預言書と大きな違いがある。他の預言書では神様が語られた言葉、預言者に託されたメッセージが中心である。所がヨナ書での神様が託されたメッセージは、ヨナがニネベの人たちに告げた、「あと40日すると、ニネベは滅びる」(3:4)だけである。ヨナ書に記されているのはヨナの行動、体験が殆どである。預言書というよりは、エズラ記、ネヘミヤ記、エステル記のような個人の体験を記した歴史書に近い。

Ⅱ.ヨナの信仰
ヨナ書には劇的なストーリーがある。ヨナの行動・心理等を【】内に短くまとめる。
1)ヨナは神様に召され、敵国アッシリアの大都市ニネベに悔い改めの使信を語ることを命じられた。ヨナは神様の御心に背き、地中海を渡り、当時の地の果てタルシシユ行きの船に乗る。【神様への背信】2)大嵐となり、神様が怒られていると船員は思い、誰が原因かを知るためくじを引くとヨナに当たる。ヨナは責任を感じ、海に投げ入れられる。【罪を告白し認める】3)神様は大魚を備え、ヨナは3日間魚の体内で過ごし神様に祈る。【神様への悔い改め】4)救けられたヨナは神様に従い、ニネベで神様の裁きを語り、王から僕まで身を低くして祈った。【神様への服従】5)ニネベに悔い改めが起った。しかし、ヨナはこれを喜ばず、神様に不平を言う。【ひねくれて逆上する】6)唐胡麻から神様は教え諭される。【神様の愛の深さを知るために】
ヨナは神様に反してタルシシユへ逃亡を企て、ニネベの救いを喜ばない思いを持った。

Ⅲ.ヨナへの取り扱い
ヨナは預言者として召された。特別な使命であり、高度な要求を満たしていかなければならない。ヨナは余りにも人間的、感情的であり、失敗を繰り返した。神様から裁かれても仕方ないと思える程であるが、神様は忍耐されてヨナを導かれている。

私たちも、神様を信じ従っていても、罪を犯し、失敗に陥ることがある。イエス様がゲッセマネで捕えられ、ペテロは付いて行ってもイエス様を3度知らないと否んだ。他の10人の弟子たちは逃げた。イエス様は復活後にペテロに親しく声をかけられた。ペテロの回復を願われた。私たちは罰せられるという恐れを締め出す神様の完全な愛に守られている。「愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。」(ヨハネ第一4:18)。